「売り上手」の時代から「作り手」の時代へ

需要創造の時代から、供給促進の時代へ
Atsushi Mandai 2026.02.14
誰でも

平成3年に生まれ、デフレ時代に育った僕は「物は簡単に売れないことが前提」、「いかにアイデアで付加価値を加えて売るか」、「まだ満たされていない需要を見つけるか」、「新しい需要を生み出すか」という商売のパラダイムに生きてきました。

まだこのパラダイムに囚われている人も多いのではないかと思います。僕自身も、どうしても油断すると、このパラダイムで物事を考えがちです。

しかし、いま時代は大きく変わっていると僕は考えています。過去5年の様々な企業の株価を見てみると、大きな変化が起きていることが分かります。

例えば、誰もがEコマースを簡単に立ち上げられる仕組みを提供している「Shopify」。

スマホひとつで、簡単に物を売れるアプリの「メルカリ」。

日本のオンライン広告面の絶対王者「LINEヤフー」。

こうした企業が伸び悩む一方で、「物を作って提供する」ということをしている企業の株価は躍進しています。

例えば、建設大手の「大林組」。

造船業を手掛ける「三井E&S」。

電気設備工事の「きんでん」。

もちろん、「物を売る」ことにフォーカスした企業でも株価が伸びている企業はあるし、「物を作る」ことにフォーカスした企業でも伸びていないところもあります。

しかし、僕の肌感覚としては、これは時代の転換点なのだと思います。そして、デフレの時代に生まれ育った僕たちは、「物が足りない時代」、「作り手の時代」というのを体験したことがないため、積極的に過去の知見を捨てて、未来志向に切り替えなければ、社会の変化に対して、大きく遅れをとりかねません。

考えてみれば、最近聞くニュースは、コメが足りないとか、抹茶の値段が何倍になっているとか、半導体がない、電気がない、データセンターが足りない、労働力が足りない、レアアースが足りない。船が足りない。マンションが足りない。

とにかく「物が足りない」というニュースばかりなのです。「物が売れない」というニュースは、あまり聞こえなくなってしまいました。新しい需要を生み出すことは、もはや社会課題ではなくなりつつあるのでしょう。

そんな時代には、最適な行動も変わるのだと思います。例えば、過去は「こんなサービスがあれば、みんなが喜ぶんじゃないか」というアイデアを試して、それが受け入れられることが成功への道でした。

失敗しても、金利も経済成長も横ばいなので、どうせ誰も伸びていないし、物が売れない時代なので、アイデアを試すためのコスト(試しに作ってもらうコスト」も安かった。だから、みんなが停滞している間に、どんどん試して、新しい需要を引き当てることができた人が、大きくなっていきました。

しかし、物不足な「作り手の時代」には、ゲームのルールが変わります。

そもそも物が足りていないのだから、作り手のキャパシティもいっぱいで、アイデアを試すためには、高いコストを支払う必要があります。また、物を作れば売れる時代なのであれば、ヒットするかもしれないアイデアを試しているうちに、その時間で、社会に足りていない物を作って売っていれば儲かったわけだから、機会損失も生じます。

そうすると、社会に求められるイノベーションも変わってきます。「新しい需要を創造するイノベーション」ではなく、「生産を効率化し、供給を増やすためのイノベーション」が求められる時代だということです。

上で紹介したような、株価が上昇している「作り手」企業の一番の課題は「需要はあるのに、キャパシティが足りない!生産が追いつかない!」ということでしょう。であれば、起業家・事業家の解くべき問いは、そちらに移っているはずです。

「売り上手」の時代から「作り手」の時代へ。これを肝に銘じていきたいと思います。

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万代 惇史(まんだい あつし)
マネックスグループ 執行役員(新規事業)/ マネックスベンチャーズ代表

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