目標ROEとM&Aにおける許容マルチプル
目標ROEが10%の会社があったとします。
この会社は、株主資本を100アロケーションするなら、そこから毎年10の利益を生み出すことを目指す必要があるということになります。
さて、この会社がM&Aで他社を買収するとき、許容されるマルチプルは何倍でしょうか。
シンプルにするために全てエクイティで買収資金を賄うとすれば、利益10の会社を100以内で買えばよいので、10倍ということになるでしょう。
ここまではシンプルです。
次に、買収後にシナジーやコストセンターの共通化によって、利益が増える場合を考えます。例えば、買収後に利益が10から15に増える場合、150で買うことができるので、許容マルチプルは15倍となると思います。
まだまだシンプルです。
最後に、買収先のROEを考えます。
まず、買収先のROEが目標ROEより低い場合。例えば、利益は10だけれど、ROEが5%の場合。
この買収自体はPER10倍であれば、株主資本を10%で回せていることになるので悪いわけではありません。しかし、買収先のROEが5%であるため、利益をその事業に再投資することはできません。そうすると、買収した事業が成長していくことはなく、単に毎年10の利益を生み出すだけということになります。
ほぼ利回り10%の債券を買っているようなイメージになるので、会社の成長に寄与するM&Aだとは言い難いと思います。
次に、買収先のROEが目標ROEと同等以上の場合。例えば、利益が10で、ROEが12%の場合。
この場合、買収後に利益をその事業に再投資することで追加で12%の利回りが得られることになります。
そうすると、マルチプル10倍で買った場合、最初の10%の利回りだけでなく、その後に12%の利回りを得られる機会も手にしたことになります。
この場合、マルチプル10倍以上で買ったとしても、再投資できる金額次第では、目標ROEに適うお金の使い方になります。
ここまでは、例示であったため、さらに一般化したいと思います。
投資に利用した資本のROE
=(買収後利益 +(再投資可能金額 × 投資先ROE))/(買収時利益 × マルチプル)+ 再投資可能金額
再投資可能金額については、100年掛かって再投資しますというのでは意味がないので、現実的には、この先の数年間で再投資できる金額をベースに判断することになると思います。
現在利益が10、買収後利益が12、ROEが18%、今後数年で30を再投資できる会社を、マルチプル15倍で買収した場合を計算してみます。
(12 +(30 × 18%))/((10 × 15)+ 30)= 9.66%
つまり、目標ROEが10%であれば、この投資はギリギリ正当化されないということになります。
では、M&Aにおける許容マルチプルはいくらなのでしょうか。
許容マルチプルベースの式に変形すると以下になります。
許容マルチプル
=(買収後利益 + 再投資可能金額 ×(買収先ROE − 目標ROE))/(目標ROE × 買収時利益)
先ほどのケースを当てはめると、以下のようになります。
許容マルチプル
= (12 + 30 ×(18% - 10%))/(10% × 10)= 14.4倍
あくまでもひとつの目安ですが、以上、頭の整理でした。
※ 本ニュースレターの内容は個人的な見解であり、何らかの組織の意見を代表するものではありません。
万代 惇史 / Atsushi Mandai
普段はマネックスグループで新規事業や投資を担当しています。情報交換、ご挨拶、ブレスト、ディスカッション、壁打ち、雑談、事業提携、何でもお気軽にお声がけください。
X:@atsushi_mandai / E-mail atsushi.mandai.1991@gmail.com
すでに登録済みの方は こちら