合成オーディエンス提供のAaruが創業2年以内でユニコーン評価
AI合成リサーチのスタートアップ「Aaru」が、シリーズAで「ヘッドライン10億ドル評価」で資金調達しました。リードはRedpointで、調達額は5,000万ドル超・ARRはまだ1,000万ドル未満とのこと。創業から2年足らずで「ユニコーン級」の評価となっています。
Aaruは、従来のアンケートやフォーカスグループの代わりに、「AIエージェントの大群」に対して調査をする会社です。
公開データと企業の1stパーティーデータなどを組み合わせて、数千体規模の「仮想消費者」をつくり出し、「価格を変えたらどう動くか」「このコピーにどう反応するか」といったシナリオをシミュレーションします。
実世界の人に質問するのではなく、「合成オーディエンス」の行動を観察します。ある意味では、デジタルツインの一種とも言えるかもしれません。
顧客にはアクセンチュア、EYなどの大手コンサルに加えて、政治家のキャンペーンなども含まれます。Aaruの合成世論調査は、ニューヨーク州で行われた民主党予備選のひとつでは、その結果をわずか371票の誤差で当てたと報じられ、従来の調査会社では拾いきれないインサイトを出せるのではないかという期待も高まりました。
そもそも、なぜ「合成リサーチ」がここまで注目されているのでしょうか。
背景には、従来型の市場調査が抱える構造的な課題があります。電話やオンラインアンケートは、回答率の低下や、回答の質のばらつき、調査完了までの時間・コスト、プライバシーリスクなど、多くのボトルネックを抱えてきました。
それに対して、AIが生成する「合成回答者」「シンセティックオーディエンス」は、過去の調査データや行動ログを学習し、それと統計的に似たデータを高速に生み出せます。
調査会社やSaaSベンダーのレポートでも、「スピード・コスト・プライバシー保護の面で優位」「これまでリーチしづらかった属性を補完できる」といったメリットが整理されています。
2025年の各種レポートでは、まだ試行段階は多いものの、合成リサーチはニッチな実験から、戦略的な選択肢の一つと見なされつつあるとされています。
競合環境を見ると、社会システム全体をデジタルツインとして再現することで紛争リスクなどをシミュレーションする「CulturePulse」、類似のソーシャルシミュレーションを行う「Simile」に加え、「AI+アンケート」で人間からの回答収集を高度化する「Listen Labs」、「Keplar」、「Outset」などが存在します。
CulturePulseは国際機関向け案件などマクロ寄りのユースケースが報じられているのに対し、Aaruはマーケティングや広告、選挙キャンペーンの「メッセージ・クリエイティブ最適化」にかなりフォーカスしたポジションと言えます。
一方、今回の「10億ドル評価」には仕掛けもあります。
ラウンドはマルチティア(階層型)構造で、一部の投資家だけが10億ドル評価、それ以外はより低い評価で投資しているため、ブレンド後の実質バリュエーションは10億ドル未満とされています。これは、有力なAIスタートアップの一部で増えつつあるストラクチャーです。
数字としてはユニコーン級を名乗りつつ、コア投資家にはディスカウントを提供するストラクチャーであり、額面通りにユニコーンというわけでもない点には注意が必要です。
万代 惇史(まんだい あつし)
マネックスグループ 執行役員(新規事業)/ マネックスベンチャーズ代表
情報交換や事業連携等、お気軽にご連絡ください。
atsushi.mandai.1991@gmail.com / atsushi_mandai@monex.co.jp
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