新規事業の正解と会社の脱皮

あるべき法人格の姿は、現状維持でも転生でもなく脱皮ではないか
Atsushi Mandai 2024.06.15
誰でも
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「経営には正解があるのか」というのは難しい問題です。法人も人格があるとすれば、「人生に正解があるのか」みたいな話だからです。

一方で、あまり難しく考えすぎなければ、あるいは適切に切り分ければ、実は案外正解らしきものがあるのではないかという気がほんの少し最近しています。とはいっても、経営に正解がある可能性がもしも存在するとしたら、その端っこの切れ端の、さらに先っぽの糸みたいなものが見えたかもしれないという程度です。

もしくは、それはニュートン力学みたいなもので、少なくとも一定の範囲の中での正解ということになるのかもしれません。逆にいうと、量子力学の世界は考えないという諦めでもあるでしょう。

僕は新規事業という領域の仕事をしているので、僕にとってのニュートン力学というのは「会社がどのような事業を営むべきか」という世界です。言い換えると、「法人の人格」を「その会社が営業している事業」という観点から見たときに、新規事業というのは、その人格がどのように移り変わっていくべきかを考える仕事でもあります。

そして、そうした力学の範囲における正解らしきものの切れ端、あるいは仮説とは「きちんと脱皮をして、生まれ変わらせていく」ということではないかと思います。これはスタートアップとは少しニュアンスが違います。よく会社の新規事業において、スタートアップのやり方を持ち上げる文脈が見られますし、僕もそうした価値観を強く持っていた時期もあるし、今でもゼロではありません。

しかし、ある程度の規模がある会社における「新規事業の正解」あるいは「事業ポートフォリオの移り変わりのあるべき姿」というのは、別の何者かに転生しようとするのでもなく、既存の身体のまま成長していくのでもなく、きちんと脱皮をしていくことではないか、という気づきを得たのが最近です。事業転換の例によく出てくる富士フィルムの事例も転生ではなく脱皮に近いように思います。今後、もう少し深く考えていきたいと思います。

もしかすると転生に成功する可能性もあるのかもしれません。でも、それはニュートン力学の世界ではない可能性があります。

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※ 本ニュースレターの内容は個人的な見解であり、何らかの組織の意見を代表するものではありません。

万代 惇史 / Atsushi Mandai普段はマネックスグループで新規事業などを担当しています。ブレスト、ディスカッション、壁打ち、雑談、事業提携、何でもお気軽にお声がけください。

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