ナンバーワン戦略とパートナーシップ
では、ナンバーワンになることが見込めない場合はどうすれば良いでしょう。それが自社の企業理念の実現とあまり関係のない領域であれば、そもそも手を出さなければ良いということになります。孫さんは「音楽家としてナンバーワンを目指したことはない」と表現しています。
しかし、自社の理念実現と関係のある領域、あるいは、そこを抑えると自社の他事業とシナジーが見込める領域であればどうすれば良いでしょう。何もせずに見送るには惜しい領域だけれど、単体で突っ込んでいっても「負け戦」となる可能性が高く、「7割の確率で勝てる見込みがなければ勝負しない」というポリシーに反することになります。
そこで、取りうる選択肢としては「7割の勝率が見込めるようなパートナーを見つけて参入する」ということになります。どこかとパートナーを組めばナンバーワンが取れる道が見えるのであれば、そこを口説くことに全力を尽くすということです。
最近意識しはじめたことは「負け戦」をたくさん抱え込むほど、どんどん毎日の仕事はしんどくなっていくということです。新規事業でもM&Aでも、大事なのは件数ではなく、「勝ち戦」を積み上げているのか、「負け戦」を抱え込んでいるのかです。
この場合の「勝ち戦」・「負け戦」とは、その市場で競合に対して勝ち切れるかということです。結果、市場がどこまで大きく伸びるかは天才にしか分かりませんが、その市場で競合に勝ちきれそうかどうかは、なんとなくイメージができるはずです。そして、どこかでイグジットすればよい純投資と違って、事業投資の場合、勝ち切らなければ、難しい戦局を抱え続けることになります。
例えば、純投資であれば業界3位や4位であっても、極論、業界2位にその事業を売れば良いことになります。業界2位は、それでナンバーワンが取れるのであれば、事業を買ってくれる可能性はあるでしょう。しかし事業として続けていく前提であれば、ナンバーワンを目指さなければ、ずっと利益率等の低い事業として残ることになります。
とにかく「勝ち戦」を作るのが事業家の仕事だということでしょう。
※ 本ニュースレターの内容は個人的な見解であり、何らかの組織の意見を代表するものではありません。
万代 惇史 / Atsushi Mandai
普段はマネックスグループで新規事業などを担当しています。ブレスト、ディスカッション、壁打ち、雑談、事業提携、何でもお気軽にお声がけください。
X:@atsushi_mandai / E-mail atsushi.mandai.1991@gmail.com
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